日本政策投資銀行にいらした小山さんがマーキュリアインベストメントの創設に携わるまでの経緯を教えてください。
【小山】なぜ日本政策投資銀行(以下、DBJ)に入行したのかについて言えば、正直「人や世の中の役に立つ仕事に就きたい」という、大まかでふんわりした気持ちしか持っていなかったんです(苦笑)。内定をいただいた後、大学などで「なかなか入りたくても入れるところじゃないんだぞ」と言われて、ようやく決意したところもありました。ただ3年ぐらいの周期でジョブを変遷しながら経験を積む中で、多くを学びましたし、エネルギー担当となって電力関係の部署で豊島と出会った時には、強烈な印象を持ちました。その後、豊島がプロジェクト・ファイナンス部門を任された際に呼んでもらい、その後の事業再生部門の立ち上げでも一緒に働いたことが、私にとっては非常に大きな糧となり、返そうと思っても返しきれないくらいの恩を感じてもいます。
その後、豊島が新規事業に関わる企画部門に所属した時に、あすかDBJパートナーズ(現マーキュリアインベストメント)の創設を担うことになって、再び呼び戻され、現在に至っています。ただし、厳密に言うとしばらくは"二足のわらじ"状態でした。マーキュリアインベストメント(以下、Mercuria)の仕事をしつつ、DBJにも籍を置いたまま企業投資部門で国内のバイアウト案件や東南アジアのクロスボーダー案件に携わり、最後の方ではメルカリさんやラクスルさんへの投資も担当していたんです。それが2015年から2016年にかけてMercuriaが上場を目指す流れに入ったタイミングとなったところで、こちらに完全移籍して今に至っています。
小山さんが考えるMercuriaの特長とは、どのようなものでしょうか?
【小山】豊島も話したはずですが、やはり投資対象においても、地理的な意味合いにおいても、枠にとらわれない、型にはまらない醍醐味がMercuriaの大きな特長です。グロース・キャピタルに始まり、これまで本当にマルチな投資活動をしてきましたし、国や地域の枠組みを越えて、中国や東南アジアを中心に創設当時からクロスボーダー投資を積極的に進めてもきました。世代の壁を越える、という意味では事業承継案件がその代表格となりますが、かつての日本のオーナー企業さんの多くにはファンド会社というものに対するアレルギーというか拒否反応が色濃く根づいていました。近年になって、そのアレルギーもだいぶ薄らいではきましたが、未だに残っている部分もあります。けれども、MercuriaがDBJから派生した存在だということが、信頼性という部分で大きな違いをもたらしてくれています。我々、中で働く者としても"政府全額出資の金融機関"だからこそ培ってくることのできたネットワークをはじめとする資産を活かして価値を生み出せる、というメリットがあります。いわゆる「キャプティブで株主の意見に左右されるのではないか」という懸念についていえば、まったく問題なく独立性を維持してきましたし、上場前に株主となった伊藤忠商事や三井住友信託銀行との関係性においても同様のことがいえます。
不動産や航空機リース・ファンド、インフラ・ファンドなどなど、多彩な投資を展開している理由はどこにあるのでしょう?
【小山】1つは現実的な理由です。上場会社としての責任を果たすためにも、利益を着実に上げながら成長していく使命が私たちにはありますから、いわゆるバイアウトファンド以外にもチャンスを見いだせばチャレンジしていく、ということです。ただし、例えば伊藤忠商事との連携で進めているビズテック・ファンドなどは、単に儲けだけを求めてのチャレンジとは異なります。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)があらゆる業界の企業で進められているわけですが、そうした最先端の経営変革が物流や不動産の領域ではなかなか進みにくい状況があります。そこにMercuriaが持つ力をお出しして、ともに業界を変え、この国の社会構築に役立っていく。そういう使命感をもって展開している事業が大部分なんです。まもなくローンチする予定のベトナムでのファンドも、DBJ時代からのつながりも活かして、ベトナム最大手の証券会社とともに進めているのですが、このファンドが成果を出せば、日本企業とのつながりの深い国ですから、日本への貢献にも寄与できると考えているんです。
クロスボーダーな投資案件については、他のPEファンドも動いていますが、Mercuriaは何が違うのでしょうか?
【小山】たしかに近年では国内のPEもクロスボーダーに注力を始めていますね。ただ、私たちにはDBJや伊藤忠の強みを有効に活かせるという利点があります。そして、どのクロスボーダー案件も、東京オフィスにいる我々自身がコミットし、手がけていける点も大きな違いだと思います。海外投資に携わる経験は、確実に個人の成長にも、組織の成長にも大きな価値をもたらします。こうした部分でも「単に儲けだけを追わない」姿勢は現れているはずです。
最後に、これからMercuriaの一員として加わろうと考えているかたへのメッセージをお願いします。
【小山】現在約40名(単体:連結で約60名)で活動をしているMercuriaですが、大まかな階層構造は他社と変わりません。アソシエイト、VP、ディレクター、マネージングディレクター、ヘッドといった具合です。ただし「上を目指そうにも、ふさがっていて上がっていけない」というような実情は当社にはありません。評価については、投資実績はもちろん問いますが、プロセスのほうにもしっかり目を行き渡らせて、フェアにプロモートしている自負はあります。なにもタイトル面で上を目指すばかりが成長とは思っていませんが、とにかく成長意欲の強いかたを受け入れ、その志を行動と結果で示してもらえるだけの土壌は用意してある、という風に理解して欲しいですね。
では、何をもって成長意欲や可能性を見るのかというと、私の場合は人間力重視です。金融関連の組織の中でも特にPEには、企業とのコミュニケーションの質や奥深さが問われます。事業、不動産、インフラなど様々な領域に関わるMercuriaでは、とりわけ暗黙知となっている領域にまで入り込んだコミュニケーションと関係性構築に左右されます。人としていかに魅力的であるか。その重要性を理解したうえで高めていこうとしている成長意欲の持ち主に、私は期待をします。今後、Mercuria自体が成長し、大きくなっていく過程においては多様性に富んだ集団にしていきたい、という希望も強く持っています。ただし、豊島が話したように「事業に寄り添い、あらゆるステークホルダーの幸せの最大化に尽くす」という点、そうしてこのPE業界はもちろん、この国の未来にも貢献したいと願う。その一点においては共有できている多様性集団になっていきたいと思うのです。ぜひ、こうした思いや考えに共感してくださるかたとお会いしたいと願っています。