お二人ともINCJご出身ですし、現状多くのメンバーもそうだと聞いています。今回のJICキャピタルのスタートにあたり、皆さんの間でどのような議論があったのでしょう?
【佐藤】たしかに立ち上がって間もない今のJICキャピタルのメンバーは、INCJの投資事業グループ出身の人間です。もちろん今後、広く多様な領域から人材を求めていくわけですが、9月にJICキャピタルが立ち上がる際には、今いるメンバー全員で改めて基本的な議論をしてきました。つまり現在において「そもそも官民ファンドとはどうあるべきなのか」というテーマについて、社外の方々にも多くのご示唆を頂きながらフラットに意見交換を重ねていったんです。
【一原】ここに至るまで様々なことがありました。しかし、JIC PEの運営ということで新たなスタートを切るわけです。皆で自分たちのあり方を見つめ直す良い機会を得た、という受け止め方をしながら、次なるJICキャピタルとしての挑戦に意欲を集中させています。今や私たちは単に投資フロントメンバーであるだけでなく、ファンドの立ち上げメンバーでもあるということ。すべてを自分たちでイチから創っていけることをポジティブに感じ取っているんです。
【佐藤】日本の発展、成長につながる投資をするという根底の部分に違いはありませんが、JICキャピタルとしては、新産業創造や国際競争力の強化、次世代社会基盤の構築、といったテーマを設定しました。加えて、新しいファンドが立ち上がり、新しい会社が設立されたのですから投資の意思決定プロセスなども変化しますし、根本的な価値観や姿勢については、JICキャピタルとしてどうするのかを皆が手探りしながら見つけ出していきたく思っています。だからこそ、設立前に相当に議論を重ねましたし、設立後の今も意識的に皆で話し合いの場を設けています。もともとフラットなチームでしたし、今後もそうありたいと私は思っています。
【一原】私の場合、INCJに参画したのが2018年でしたから、投資を一からオリジネートする仕事を多く体感することができないまま、今のJICキャピタルにシフトした形です。そういう意味では、やりたかったことがついに出来る、という喜びも感じています。
どうしても「官民ファンド」と聞くと、お堅いイメージを持ってしまいがちですが、どうやら相当にフラットでオープンなようですね?
【佐藤】もともと役職やバックボーンなど関係無く、なんでも話し合い、チームで事を進めるカルチャーが根付いた集団でした。しかも、皆で新しい会社を立ち上げるという機会を得たので、さらに絆は深まったと感じています。
【一原】コロナ禍もありましたから、なかなか対面で皆が話し合えるような場を持てない時期もあったのですが、そんな局面にあっても、可能な限り話し合いを持ってきましたね。
DXやESGなどに特に注力する姿勢が示されていますが、実際のところどうなんでしょうか?
【佐藤】ESGやDXをはじめ、Society5.0へとつながる変革には特に注力していきたいと皆で確認をしています。とはいえ、各業界には固有の課題が山積しておりますし、こういった業界横断的な領域の取り組みをしていく上では、いくつもの課題があります。これらをいかに乗り越えてインパクトのある投資ができるか。難易度は高いと思いますが、そういったチャレンジを果敢に手掛けていきたいと思いますね。
【一原】私としても前職での投資銀行業務を通じて、特にモビリティ産業には深く関わってもきましたから、そうした産業のために何とかお役に立ちたい、という強い気持ちは抱いています。ただし、一方で官民ファンドだからこその責任もあります。すべてのチャレンジに投資を実行するわけにもいきませんし、リターンをいかに確保しながら、どこまで各業界の課題解決や、業界横断によるトランスフォーメーションに我々が貢献できるかを、厳粛に捉えながら進めていく姿勢も不可欠だと考えます。
【佐藤】一原が指摘したように、官民ファンドだからこそできる「社会的意義」に重点を置いた投資が私たちには求められていますが、それをしっかりとリアルなビジネス上のオポチュニティに変換していくことができなければ、責任を果たせません。ただ、いずれにせよ国ぐるみ、社会ぐるみの壮大なチャレンジが求められていることは事実ですから、なんとしてでも成果につなげたい。それが私たちの総意です。
【一原】今後参画していただく新しいメンバーに求める資質とも重なってくる話なのですが、やっぱり「あきらめない気持ち」というのを我々はどのファンドよりも強固に持つべきだと思っています。モデリングやデューデリジェンス、ディール組成等々に携わった経験者が参入してくれることを望んではいるものの、そうしたPEとしての専門性とは別次元に、チャレンジについてまわる逆境から逃げない心というものも、是非持ち合わせていて欲しいと思います。
今いただいた条件以外に、新しい参画者に求めるポイントがあれば教えてください。
【佐藤】官民ファンドの既存イメージと異なるかもしれませんが、実は今いるメンバーの大部分に共通しているのが「好奇心」や「冒険心」が旺盛だということです。とりようによっては誤解を受けるかもしれませんが、やはりJICキャピタルのように未来を見つめた明確な目標を抱えている官民ファンドには、トライするマインドが絶対に必要なんです。
【一原】だからあえて、即戦力の専門性よりもマインド部分を強く発信していきたいと思います。コンサルタントや投資銀行の担当者との大きな違いは、最終的に自分の判断が求められるということ。その点において自分事としてブレない判断軸を用意できているかどうかは問われてきます。言い換えれば、コンサルや投資銀行にいたら味わえない局面にいられるということ。それを通じて成長したいと思える人に是非参画していただきたいです。
【佐藤】個人が問われる部分はたしかに大きいですね。だからこそ、投資先企業のかたがたも含め、あらゆる人と向き合っていくことを厭わないタイプのかたが活躍できるし、成長も手にできると思います。そして、そういう経験を積んできたからこそ、今いるメンバーはフラットにつながり、チームワークを遂行できているのだとも思うんです。
【一原】これから人員が増えていくばかりでなく、民間ファンドとは一線を画した成長を皆がしていけたなら、JICキャピタルは投資人材の養成という、もう1つのミッションも果たしていくことが出来ます。私自身もこれまで以上の成長をものにしていきたいと考えています。
【佐藤】JICキャピタルが行っていく投資自体は、長期的なビジョンに基づくものも多くなりますが、まず今私たちが目指すべきは、1号ファンドを必ず成功に導き、次につなげていくこと。そのスタートの段階から一緒に奮闘してくれるかたが次々と増えてくれることを期待してやみません。