まずはご経歴と、カーライルに参画された経緯を教えてください。
【西澤】前職はUBS証券の投資銀行部門です。UBSでの得難い経験としては、新卒で東京チームに入社して2〜3年経験を積んだ後、ロンドンに約1年強赴任したことを思い出します。ロンドンでは日本に関わりある案件も少なく、例えば日本人の私がノルウェーとスウェーデン間のM&Aを担当するというようなとても刺激的な環境でした。
UBSでもアクティブでやりがいのある経験が積めた一方、30代には自ら意思決定ができる仕事をしたいと考えるようになり、PEファンドへの転職を意識するようになりました。働くならケミストリーの合う会社がよいと考え、UBSの元同僚が数名働いていたカーライルに2011年に参画しました。
今後は日本でもドラスティックなカーブアウトが増加していく。
入社してからの11年をどのように過ごしてきましたか。
【西澤】アソシエイトとして1年、シニアアソシエイトとして2年、ヴァイス・プレジデントとして4年、ディレクターとして4年を過ごし、2023年1月にマネージング・ディレクターに昇格しました。
アソシエイトとして入社した2011年当初は、今のように業界全体として案件が豊富というわけではありませんでしたが、アソシエイトの不足も有り、同時に複数の案件を担当することができました。シニアアソシエイトになると、さらに担当する案件数も増え、とてもハードでしたが、様々な投資先に関わることで視野も広がり、自分の成長に繋がったと思います。ヴァイス・プレジデントは実務上のリーダーポジションで、ミドルからシニアになる過渡期の位置づけでした。ディレクターになると、案件の責任者を務め、自らソーシングを行う立場になります。私の場合、ちょうどディレクターに昇格した時期に日本オフィスでは、今後日本企業の「選択と集中」が一層進展することでこれまでにないカーブアウトが増加するという見通しを立てていたので、最初の5か月間ワシントンD.C.の本社に派遣され、カーブアウトに関するグローバルな知見を得る機会も頂きました。
ワシントンD.C.本社ではどのようなことを経験されたのでしょうか。
【西澤】カーライル米国旗艦ファンドの投資チームのもとでカーブアウトを学びました。彼らは例えば欧州コングロマリット企業の売上の半分を占める事業カーブアウト案件を手掛けるなど、カーブアウトに関して世界的にも屈指の知見・経験を持っていました。日本でのカーブアウトはまだ子会社の切り離しがほとんどですが、海外では本体の事業部を切り離すような案件も盛んです。この潮流は資本市場の成熟化に伴って起こることと思いますが、今後の日本でも同様のことが起こると想定され、とても意義深い経験でした。
競合よりも高く買収し、さらに高く売却するーそれができるバリュープランを立てなければならない。
カーライルで働く上で、求められることは何でしょうか。
【西澤】まず、この仕事が好きであることと、粘り強くあることです。投資先の経営者にとっては長年育てた大切な会社を私たちに託すということですから、強固な信頼関係を築けなければ成立しません。ただ器用にこなせば良い仕事ではなく、全人格を注いで向き合うべき仕事です。そして、Exitまで何年も続ける息の長い仕事なので、どんな時でも決して諦めないメンタリティ、粘り強さが必要です。
それらに加えて、今後は高いバリューを創造する力がこれまで以上に重要になると思います。ワシントン本社で感じたのは、アメリカのM&Aマーケットの奥深さは日本の比ではない、ということでした。日本ではまだまだ"ディールをつくる"ことが多いのですが、アメリカでは数ある案件から"バリューをつくり"ます。他社に勝つためには、他社より大きくバリューアップできる提案を仕立てて、より高く買収する必要があります。どの案件にリソースを割くべきかシビアに判断し、その案件に対して綿密なバリューアッププランを立案する必要があります。
今はまだ過渡期ですが、日本も同様の傾向に向かいつつあります。1案件に対して複数社が提案することも増えてきましたし、企業サイドの投資ファンドを見る目も年々シビアになっています。カーライルの組織が持つ力、グローバルで持つ知見やネットワークを活用しつつ、高いバリューアップを実現できるプランを立案することがこれまで以上に重要になっています。
投資先企業の長期的な成長、永続的な成長を追求する。
カーライルはどのような会社でしょうか。
【西澤】日本経済や社会に対して、投資先を通じて貢献したいという愚直な思いを持つ会社です。社内では、よく「企業価値とリターンの順序を間違えてはいけない」と言われます。カーライルは投資先の中長期的な成長の先に大きなリターンがあると考えています。また、「自分たちの投資期間は有限である」ということもよく言われています。いずれ投資先は私たちから離れますが、その後も投資先が順調な道を歩んでいるかが私たちの評価になると考えているのです。
最後に候補者の方へメッセージをお願いします。
【西澤】私たちの仕事は刺激的で本当に面白い仕事です。しかし、大きな責任を持つ仕事です。一歩間違えれば、投資先や投資先の関係者を路頭に迷わせかねません。それだけプレッシャーが大きい仕事です。
カーライルが持つグローバルなネットワークや蓄積された知見をフルに活用し、投資先1社1社高い成果を出すことが求められます。信頼関係をどのように築くのか、どうすれば投資先の方々に能動的に動いていただけるのか、利害関係に齟齬が出た時にどう意思決定すれば良いかといったことを日々考えながら行動しなければなりません。そういった複雑で難しい局面もある仕事ですが、他では得難い経験ができると思いますので、ご関心のある方には是非門戸を叩いていただきたいです。