現役戦略コンサルタントコラムコンサル独立の現実:"一匹狼"として稼ぐには何が必要か

はじめに

AI・DX時代のコンサルの存在意義:

近年、コンサルティング業界において、組織に属さず独立して活動する「一匹狼」的なコンサルタントが出てきています。彼らは、自身の専門性や経験を武器に、クライアントと直接契約を結んだり、他ファームのチームにエキスパートとして参加したりするなど、様々な形でプロジェクトを遂行しています。

筆者自身は独立の経験はありませんが、過去に同僚が独立したり、あるいはそうした独立コンサルタントとチームを組んで仕事をしたりした経験があります。また実感として、こうした"一匹狼"的なコンサルタントの活躍機会は増えてきているように感じます。例えばフリーコンサルとマッチングするようなサービスが出てきており、筆者が所属するファームにもよく営業の連絡をいただくようになりました。

"一匹狼"として独立して成功を収めるためには、単に専門知識や経験だけでなく、さまざまなスキルや戦略が求められます。本稿では、独立コンサルタントとして稼ぐために必要なハードスキルとソフトスキル、ファームに属している場合と独立する場合のメリット・デメリット、そして独立に適したタイミングについて整理します。

本論

1. 独立コンサルタントに求められるハードスキルとソフトスキル

独立して活動するコンサルタントには、以下のようなハードスキルとソフトスキルが求められます。

1-1. ハードスキル

専門知識と業界理解:特定の業界や分野における深い知識と理解は、クライアントからの信頼を得るために不可欠です。たとえば、製造業向けのコンサルタントであれば、現場オペレーションからSCM、IoT導入に至るまでの知識が求められます。

データ分析能力:課題の構造を把握し、効果的な打ち手を導くためには、定量データに基づく分析が欠かせません。BIツールやSQL、Pythonなどのツール活用力も加点要素です。

プレゼンテーションスキル:提案書や中間報告書を通じて意思決定者を説得する力は極めて重要です。PowerPoint資料作成だけでなく、論理構成や話し方のトレーニングも必要です。

プロジェクトマネジメント能力:進捗管理、工数予測、ステークホルダーとの合意形成といったマネジメント力がプロジェクトの成功を左右します。

1-2. ソフトスキル

コミュニケーション能力:一匹狼は孤独ではなく、むしろ人間関係の構築力が問われます。クライアント、協力者、外注先などとの信頼構築が収益にも直結します。

自己管理能力:納期遵守、体調管理、セルフモチベートはすべて自己責任です。年間のプロジェクトスケジュールを俯瞰し、繁閑の波に備える力が必要です。

柔軟性と適応力:想定と異なる展開や期待される役割の変化にも即応できる思考の柔軟さが武器になります。

リーダーシップ:小規模でも他者を巻き込む力があれば、受注範囲が広がり、リピート案件につながります。

独立したコンサルタントとチームを組成する側の立場として、重視するスキルはプロジェクトやチームの組成にもよりますが、長く付き合いを続けるという観点ではソフトスキルの方を重視しているかもしれません。(もちろん、参加いただく判断をする上ではハードスキルの条件を満たしていることが前提ですが)

その理由はいくつかあります。1つはプロジェクトには不確実性があること。提案当初の想定から実施内容が変わることはよくあります。そうした変動においても柔軟に対応できたり、コミュニケーションをとれる人材は重要です。また、リーダーシップもポイントです。自発的に自分のできることをアピールし、かつリードしてくれる人材はマネジメントの観点で非常に助かります。最後に当たり前の話かもしれませんが、自己管理能力も必須です。コミットした成果に対し、適切に対応できない人とはチームを組めません。

"一匹狼"に限らず、他社メンバーをチームに加えるというのは、プロジェクトにおいてリスクとなり得る要素です。そのリスクを最小化するためのソフトスキルを持つことは、独立において重要な生存戦略です。

2.ファームに属している場合と独立する場合のメリット・デメリット

"一匹狼"として稼ぐという目的に対し、そもそも独立すべきかという観点でも検討してみたいと思います。前提としては、これまでファームに所属していた人が独立するとし、ファーム所属と独立とを比較対象としてみます。

2-1. ファーム所属の利点と限界

メリット:
  • ブランド力による信頼性
  • チームでの学びと分業による生産性
  • 組織的な研修・育成
デメリット:
  • プロジェクトアサインの自由度の低さ
  • 報酬の天井(給与型)
  • 所属による業務スタイルやバリュー制約

2-2. 独立の利点とリスク

メリット:
  • 自分の裁量で顧客やテーマを選べる自由度
  • 高単価案件を直接受注すれば年収アップが可能
  • 多業種と関わることで知見が広がる
デメリット:
  • 案件がゼロの月もあるリスク
  • 経理・契約・営業・法務など周辺業務を自分で対応
  • 情報や学習のインプットが孤立しがち

2-3. 比較表

項目 ファーム所属 独立
収入 安定だが上限あり 成果次第で大きく変動
自由度 組織の方針に制限される テーマ・働き方ともに裁量が大きい
支援体制 人材・情報・ブランドの支援あり 自力で構築する必要あり
組織的学習機会 同僚からの学び・研修がある 孤立しやすく自己研鑽が必要
経営責任 部分的 全面的
自明の理だと思いますが、独立すればハイリスク・ハイリターンになります。自身に明確なビジョンがあり、営業活動と案件獲得に自信があれば、独立することで大きなリターンを得ることができるでしょう。

一方で、ファームに所属することで得られるメリットも当然あります。稼げることだけに着目せず、独立のデメリットをきちんと評価することが重要です。特に、筆者がコンサルを20年以上経験して思うのは、組織的学習機会の重要性です。ある程度の規模のファームにいれば、他のメンバーからはもちろん、グローバルからの情報を得る機会が数多くあります。それによりクライアントに新たな提案を行ったり、自身のスキルを伸ばすことができたりするのは、独立した場合と比較すると大きな違いかもしれません。

3. 独立に適したタイミング

独立に向いているタイミングにはいくつかの指標があります。


  • 十分な業務経験:少なくとも5年以上、マネージャークラスでの経験があると、独立後も信頼されやすくなります。
  • 強固なネットワーク:前職で築いた人脈が初期営業や紹介に役立ちます。
  • 蓄え・リスク対応:生活費6ヶ月以上の資金を持ち、収入の空白期間に備えること。
  • 明確なテーマと売り物:どんな領域に強みがあり、どのような成果を出せるのか明文化しておくこと。


「思い立ったが吉日」という言葉はありますが、独立を決意した日と独立を実行する日は同じである必要はありません。成功を目指して独立をする以上、その確率を一定程度上げることは必要不可欠でしょう。独立という次のスタートを決意したときに、どのように準備をすればそれが"適切なタイミング"と言えるのか。自身の独立をある種プロジェクトとみなし、プロフェッショナルとしてプロジェクト計画を立てることが求められます。

4.営業戦略と案件獲得手法

独立コンサルタントの多くが直面するのが「案件が取れない」という課題です。特に独立初期には、以下のような戦略と手法が効果的です。


  • 紹介営業:最も成功率が高く、信頼をベースに案件化されやすい。元上司・同僚・既存顧客との関係性を維持することが大切です。
  • ナレッジ発信:ブログ・SNS・note等での発信を通じて、専門性と人間性の両方を伝えることができます。定期的に投稿を続けることでリーチが広がります。
  • 登壇・セミナー活動:業界団体や勉強会での講師経験は、自身のポジションを明確にし、商談への導線にもつながります。
  • プラットフォームの活用:プロフェッショナル人材のマッチングサービスを利用して受注実績を積むことも一つのやり方です。


独立した知人の話を聞くと、なんにせよ継続的に、能動的に活動することが重要のようです。時には全くリレーションのない相手先に電話営業をしたこともあるそうです。ファームに所属していれば、そのファームのネットワークや看板を用いた営業活動ができますが、独立すると自分自身のものしかありません。

獲得するだけでなく、どのような案件構成にするか、といったポートフォリオの検討も必要でしょう。自分自身の稼働を100%としたときに、どのように時間配分をするのかも、営業戦略の主要なテーマです。

終わりに

一匹狼の道は自由である一方、自己責任の世界です。高いスキルセットと多様な経験、柔軟な思考、そして孤独に耐える胆力が求められます。しかし、それらを備えれば、クライアントと対等に付き合い、自らの信念に従って働けるやりがいのあるキャリアパスでもあります。準備を整え、リスクを認識し、自分の価値を明確にできるなら、独立は決して夢物語ではありません。

とはいえ、この「できるなら」が大きなハードルであることも間違いありません。コンサルタントとして、プロジェクトの様に冷静にマーケットや自分自身を分析・評価し、そのうえで独立に向けた計画を立てることが重要ではないでしょうか。

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