非常に華々しいキャリアを持つ中山さんが、EYTASへの参画を決めるまでの経緯をおしえてください
【中山】新卒で日本銀行に入行した私は、金利や株式といった金融市場調査や金融資産価格のモデリングなど、金融市場のオブザーバーとしての仕事に就き、その中で金融知識やスキルを養ってきました。そうしてある程度の成長を得てくると、今度はフロントの立場として実力を試してみたいという気持ちに駆られ、外資系投資銀行に転職。海外企業のクレジットデリバティブを活用した金融商品の組成や販売、アジア太平洋地域のクレジット商品のトレーディング戦略の考案や取引の実行といった業務にかかわりました。
こうして金融のプロフェッショナルとしての能力や経験に幅と深みをつけている最中、2008年にリーマンショックが起こりました。金融界は全世界レベルで大混乱を呈し、まさにその状態を目の当たりにしたことから「金融の世界にはまだ1つ経験していない重要な領域があった」と気づきました。それがリスクマネジメントのフィールドです。この分野で人材を募集していたBig4監査法人に移り、アドバイザリー業務に携わりながら、大手金融機関に対するリスク管理に関する助言業務を担当しました。具体的には、ストレステストの改善やリスク・ガバナンス態勢の構築といった領域に注力をしました。
重要な経営の意思決定に携わる、という仕事もここで体験したことから、再び「その力を現場で振るってみたい」願望が湧き、これまで未体験だった事業会社、具体的には外資系大手保険会社に転職。資本管理部長として、グループ内の資本政策や財務リストラクチャリング、収支計画、また、グループ横断的なストレステストなどをリードしました。そして2017年、EYTASがOR組織を新設したことを知り、新しい挑戦の機会と捉え入社を決めた次第です。
実に多様な知見とスキルを幅広く得て、事業会社でそれらを行使していく立場にも就いていながら、あえてEYへ転職された理由とは何だったのでしょうか?
【中山】おっしゃる通り、ありがたいことに一通りの学びと経験を手に入れることができた、という自己認識がありましたので「次にもしキャリア上の挑戦をするとしたら、自ら経営者になる道か、経営の最終的な意思決定に関わる立場しかない」と考えていました。そういうタイミングでEY Japanがグループ内にORという名前の新チームを立ち上げたわけですが、私が最終的に転職を決意した最大の理由は人でした。ORチームのリーダーに出会い、彼が話す理念と彼自身の人格に魅せられました。「この人のようになりたい」という純粋な願望が、最大の転職理由でした。
ではその理念と目指している課題解決について教えてください。「よくあるORとは一線を画す」と聞いてはいるのですが。
【中山】まずキーワードを3つお伝えしておきます。1つはクリティカル。2つめはクロスボーダー。3つめがハンズオンです。通常、多くのコンサルティングファームやアドバイザリーが設けているオペレーショナルリストラクチャリング組織は、いわゆる業務改革全般の案件に向き合っています。しかし我々のORは創設時から先の3つのキーワードを重視して今に至っています。
つまり、クライアント企業が抱えている事業課題でも、特に重要度もしくは危機的度合の高いものを、日本国内の市場や組織のみならず海外も含めたクロスボーダーな観点から受け止め、経営に入り込んだ実行力をもって、ハンズオンで解決に当たっていく。しかも、特に財務や資本施策関連に枠組みを限ってはいません。例えばM&Aを実施した企業がビジネスモデルや文化の違いによって悩みを抱えているようなケースに対しても、その根源的な解決に取り組んでいます。
いわゆるPMI(M&A後の統合プロセス)に近いものを連想してしまいますが、そういった案件の中でも特に重要度の高い場合に全体最適を目指して当たっていくということでしょうか?
【中山】PMI的な事案ばかりではありません。ただ、様々な課題解決の事案の中でも特に重要度の高い課題を受け持っていく、という意味ではおっしゃる通りです。EYも含め、コンサルティングファームやアドバイザリーの大規模組織には様々な機能に特化したチームが揃っていますが、悩みを抱えているクライアントの立場でいえば、解決したい問題が深刻であればあるほど、解決するためには多面的な見方が問われてくるわけです。
これまではともすると、税の問題は税務の専任チームが、リスクマネジメントの問題はリスクのプロフェッショナルチームが、というようにサイロ型もしくは垂直型の対応になってしまいがちでした。しかし課題の重要性が高ければ高いほど、こうしたサイロ型のアプローチでは解決せず、個々の課題に総合的かつタイムリーに取り組んでいく水平型のアプローチが必要になります。そんな中でサポートする側は多様な専門性を迅速かつ有機的に機能させ、クライアント経営陣にも重要な意思決定をよどみなく下していってもらわなければいけません。
想定外の展開も十分あり得ますから、そういう場合にも柔軟に対応できる指揮官が不可欠です。要は、EYに揃っているあらゆるエキスパートたちを縦横無尽にチームアップしながら、問題解決というゴールに向かっていくリーダーシップを発揮し、自らも走っていける存在が求められているということです。アメリカンフットボールでいうところのクォーターバック。それを担うのが私たちORです。
重大な危機に直面しながらも勝利していくためのクォーターバックの集団ということですね? 現状、どういう陣容なのでしょう? そしてEYパルテノン等との棲み分けについても教えてください
【中山】チームとしては設立からまだ2年ほどですから、メンバーは総勢で10名ほどですが、今後更なる拡充を目指しています。クォーターバック的な役割を担い、なおかつ経営における重大課題を解決するというと、ORの全てのメンバーに幅広く、なおかつ奥深いスキルや知見が求められるようなイメージを持つかもしれませんが、実際にはそんなスーパーマンはなかなかいませんし、最初から何から何まで知悉している必要もありません。
実際、今いるメンバーもコンサルティングファーム、投資銀行、事業会社など、前職はバラバラです。もちろん、それぞれが強みとしている部分ばかりでなく、それ以外についても一定水準の力量は問われるものの、重要な案件ばかりを任される中で成長していきたいという意識を強く持っている人であれば、クォーターバックの役目を担っていただけると考えています。EYには有能な選手が大勢いますから、彼らが私たちを支えてもくれます。
小林が率いるEYパルテノンも、時にはともにチームを組んで協働します。彼らもまたEYの総合力を的確に結集して、クライアントの問題解決を目指していく一団ですが、とりわけ上流の経営戦略に注力している点がORとの違いです。EYパルテノンのリサーチ結果に基づきORが組織再編をデザインするといった例もあります。これとは逆に、危機的な状態を脱するまでの対応をまずはORが担当し、その後に中長期的な改善に向けて他のチームが引き継いでいくケースもありますまた、危機的な状況が長引く場合には、我々OR自身が長期的にクライアントに寄り添っていくこともあります。
今後、人員を拡充していくというお話ですので、どういう人材を望んでいるのかについても教えてください
【中山】先ほども触れたように、あらゆる経験や能力を持ち合わせている必要はありません。もちろん、そういうスーパーマンが参画を希望してくれるのであれば大歓迎ですが、そうではなくとも、ORというチームの役割に興味をお持ちいただき、このビジネスに共感してくださるかたに参画してほしいと願っています。当然、常に責任重大な立場に居続けることになりますが、だからこそ個々人も成長することが可能だと言えます。
また、向き合う事案は毎回大きく内容が異なりますから、自身に求められる役割が単調で固定商品化されてしまうような感覚とは無縁。時代の変化や企業社会が置かれている状況の最前線に触れていくことが可能ですし、最先端の問題解決に携わっていく機会も豊富にあります。以上のような話を聞いて、前向きに参画を希望してくれるかたがいるのであれば、ぜひお会いしたいと思っています。