プロ経営者インタビュー 橘田 尚彦 氏 ケンコーコム株式会社 代表取締役社長 執行役員CEO (2015.8)

プロ経営者インタビュー

橘田 尚彦 氏

[2]現在のご自身の役割について教えてください

最初にケンコーコムのお話をいただいた時、私がこの会社に持っていたイメージは「難しいEC事業の領域にありながら、成長を続けている企業」であり「楽天グループの中でも、そして楽天市場出店企業の中でも、とりわけ大きな規模でビジネスを展開している会社」でした。

今なお新規参入も続出し群雄割拠するEC領域は、競争が激しく、ケンコーコムもまた安閑としていられるわけではありませんが、事業拡大を続けています。ですから私がここへ来て、どんな役割を果たすべきなのかといえば、「この成長企業をさらに引き上げ、次のステージとも呼ぶべき段階につないでいく」ことだと確信しています。

「次のステージ」が意味する内容は多岐に渡ります。「コア事業をより大きく」はもちろんのこと「既存とは一線を画す新しい事業の確立」も含まれますし、そのためにも「人と組織をさらに伸ばしていく」という重大な仕事を任せてもらっているのだと考えています。

大切なのは、私を筆頭に「常に新しいことを」という発想やスピリッツを皆とともに実践していくこと。今はそれを実現するためのアクションを少しずつ起こしているところです。

[3]小中学生時代はどんなお子さんだったのでしょう?

とりたてて何か事件を起こしたわけではありませんが、やんちゃ坊主だったことは間違いないようです。今でも鮮明に記憶しているのが、小学校1年生の時のこと。初めての父兄面談の席上で、母が担任の先生にこう言われたというんです。「お子さんのことについて、私は責任を持てる自信がない」と(苦笑)。

当時の私にはピンと来ませんでしたが、振り返ってみれば、例えば昼間、薬剤師だった母が経営していた薬局をうろうろしていて、そこに子ども連れのお客さんがやってくると、初対面のその子に噛みついたりしていましたから(笑)、「手の焼ける子」だったのは事実だと思います。

成績は中の上くらいだったと記憶していますが、授業中も先生にとっては面倒くさい子でした。例えば分数の足し算引き算を習っても、教えられた正しいロジックで計算するのがイヤで、自分流に編み出した理論で答えを出したりしていたんです。一筋縄ではいかない感じだったでしょうね。

それでも、どういうわけか卒業前には生徒会の会長に選ばれましたし、中学に行ってからも学級委員などをよくやらされました。音痴なことがコンプレックスだったのに、なぜか音楽コンクールで指揮者をやらされ、たまたま優勝してしまったせいで3年間、指揮者をずっとやらされたり(笑)。自分でも、やんちゃ坊主のくせになぜそういう役割を任されていたのか、いまだに理由がわからないでいます。

[4]高校、大学時代はいかがですか?

リーダーシップの芽生えのようなものはあったのでしょうか?

中学時代には、先に申し上げた事柄とは別に、バレー部で副キャプテンをしましたし、高校に入ってからは文化祭でクラスのリーダーをやったりもしました。そういう事実だけを並べると、さぞかしリーダーシップも芽生えただろうと思われるかもしれませんが、そんなことはなかったと思います。

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早稲田の付属校が自由な気質の校風だったのをいいことに、昼休みに外へ抜け出したりする(笑)、あいかわらずのやんちゃ坊主でした。日本でバブル景気が盛り上がり始めた時期に大学生になりましたから、ご多分に漏れずパーティサークルを自分たちで結成して、パーティ券を売り歩いたりしてもいました。

それでも、英語の勉強にだけは興味を覚えていました。私の世代は、小さい時から欧米の音楽や映画に強く感化されて育ちましたから、「英語を話せるようになったら、もっと楽しくなる」と思い、「だからオレは留学するんだ」と心に決めていました。

念願かなって海外へ留学し、カリキュラムを終えた後に復学すると、今度は国際法のディベートサークルに入って熱を上げました。理由は「ディベート大会に出場して優勝すると、ニューヨークへ行ける」特典を手に入れたかったから。

それまで大会に出ても万年最下位のようなサークルでしたが、2回準優勝するくらいにまで皆とともに力を向上させることができました。まあ、準優勝ではニューヨークに行けませんから、悔しかったのは事実ですが、良い経験ができたと思っています。

[5]ご家族やご親戚に経営者はいらっしゃいますか?

父は教師をしていました。母は薬剤師の資格を取り、薬局を営んでいました。ですから、周りの大人たちは「大きくなったら先生になるの?」とか「薬剤師になってお母さんの薬局を継ぐの?」などと、子ども時代の私に問いかけてきましたが、そのどちらにも興味はありませんでした。父方の叔父が2人、経営者の道を進んでいましたが、特に大きな影響を受けることはなかったと思います。

[6]ご自身の性格について教えてください

短気です。それでも、年齢を重ねるごとに、自分ではだいぶ我慢強くなったと思っています。

[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?

経営というものに具体的な関心を持つようになったのは、やはり社会人になってから、つまり東京銀行在籍時だと思います。そして、ダートマスへ留学して、経営を学ぶようになった時、自分の中に「経営の仕事に携わりたい」という希望がはっきり芽生えました。ただし「社長」という肩書きや地位に執着を覚えたことはこれまで一度もありません。

[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?

もしも経営トップの座に就いて、その責任を果たしていこうというのなら、私は「自然体」というメンタリティがとても大切になると考えています。もちろん、社内外を問わず、周囲の人の声に耳を傾けていく姿勢も不可欠なのですが、声を聞くたびに必要以上に影響されてしまうようでは、意思決定を下せなくなります。

「人の話は積極的に聞く、けれども、それに左右はされない」という意味合いの「自然体」を確立することは、非常に重要だと思うのです。

スキルについては、いろいろとたくさん持っていたほうが役に立つでしょうけれども、優先順位として最も高いのはコミュニケーションスキルです。一言にコミュニケーションといっても、その中身や性質は様々ですが、とりわけ社長職にとって重要なコミュニケーションスキルは「まとめる」力。

上場企業ともなれば、多様なステークホルダーに囲まれます。こうした人たちの意見を引き出し、本音を言ってもらい、そのうえで皆が納得するような主張もしていかなければならない。それが「まとめる」コミュニケーション。このスキルは必須だと思います。

経験については、「こういう経験をしなさい」というように簡単には言い表せません。「組織は社長の器以上に大きくはならない」とよくいわれますが、大きな器を得ていくのに有用な経験ならば、それがどういう種類のものでも構わないと思うのです。器を大きくするような経験を自ら獲りに行くような姿勢があれば、それが将来につながっていく、と考えています。

[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?

特にございません。重複になりますが、先の質問で挙げた「自然体」「まとめる力」「人間として器を大きくすること」の3点が大切だと思っています。

[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?

「どこ」と挙げるのは難しいですね。これまでの、すべての経験を通して積み上げてきたと思っています。

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