プロ経営者インタビュー 細谷 武俊 氏 オフィス・デポ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 (2013.8)

プロ経営者インタビュー

細谷 武俊 氏

[6]ご自身の性格について教えてください。

以前、カクヤス社長の佐藤順一と私と知人の3人で食事をした時、この知人が佐藤のことを「猛獣使い」と呼んでいました。じゃあ、この「猛獣」とは誰なのかといえば、私を指していたわけで(笑)、自覚はありませんけれど、そういう性格だと思われていることが多いようです。酒が強くて身体も鍛えている......そういう人間は性格とは無関係に「猛獣」と呼ばれてしまうのかもしれませんが(笑)、カクヤスは平たく言えば「酒屋」です。酒屋には昔から男臭い荒くれ者が集まります。ですから、猛獣と呼ばれるような男にはぴったりな場所だったのかもしれません。

[7]いつ「経営者になろう」と思われましたか?

先ほども言いましたが、私はビジネスをある意味で競技のように捉え、勝負に打ち勝つ気構えで臨んできました。ビジネスを競技に例えるのなら、この競技のチャンピオンはやはり経営者です。勝ち続けることを義務づけられたチャンピオンです。「競技として臨む以上、当然目指すのはチャンピオン」という意識がいつのまにか私の心に宿っていたのも自然な成り行きだったと思います。ただし、それほど強烈に意識してきたわけではありません。「どうしても経営者になりたい」と思って突き進んだわけではないのです。

[8]経営者に必要なメンタリティ、スキル、経験とは何でしょう?

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最初にメンタリティについてお答えすると、「真に受け過ぎない」ことが大切だと思います。心というものは、少々の打撃を加えられても、しなって、はじき返し、また元の状態に戻れる強さがあります。しかし、あまりにも強い衝撃を受ければヒビが入ることもある。ポキリと折れてしまうことだってある。そうなってしまったら、元通りに修復するのは大変です。自らの心の状態を健全な状態に保つには、やはり「何でもかんでも真に受けたりしない」ことが重要になる。

では、どうすればいいかというと、「イヤな事を忘れる術(すべ)」「ダメージを軽減し、元に戻す術」を自分なりに持つしかありません。私の場合、酒を飲むことや、大好きなトレーニングをすることなど、「忘れる術」をいくつも持っていたことが幸いしてきました。

スキルについての私の返答は「絶対に必要なスキルなんてない」です。現場の様々な仕事でも、経営という仕事でも、「有効なスキル」と呼べるものはいくつもある。持っていないより、たくさん持っていた方がいい。しかし、例えば自分にないスキルがどうしても必要な局面がやってきたとしても、そのスキルを持っている仲間が隣にいるのならば、素直にその仲間にやってもらえばいい。私はそう思います。固執しないのが私の流儀です。むしろ「何でも自力で」と固執するほうが問題だと思っています。本当に大切なのは、困った時に力を貸してくれる仲間がいるかいないか。そちらのほうが経営者に問われるのだと考えます。

経験については「破滅に至らない程度の失敗」と答えておきます。自慢にはならないかもしれませんが、私はこの手の失敗を数限りなく経験しました(笑)。そして、その経験が確実に私を成長させてくれたと思っています。「破滅に至らない程度」というのは、人によって違いがあるでしょうけれど、とにかくメンタリティのところでも話したように、心がポキリと折れてしまわない範囲でなら、失敗を恐れずに仕事や人生と向き合うほうがいいと思っています。

[9]他に経営者に必要な資質や能力などありますか?

メンタリティやスキルや経験よりも、第一に必要なのが愛だと信じています。

世の中には、とても社交的に見えるのに実は人との信頼関係が築けないような人もいます。そういう人間では経営の仕事は続けられないでしょう。相手が職場の仲間であろうと取引先の人であろうと、まずは「一緒にいる」ことが大事。それが愛です。何か気の利いたセリフを言えるとか、そういううわべのことではなくて、一緒にいる人たちの幸せを最優先する姿勢の有無を周りは感じている。もしも自己実現などのために他のことを犠牲にしてしまうような素振りがあれば、信頼関係を築くのは難しくなります。やっぱり愛こそが最も必要な資質なんです。

[10]これらのスキルなどをどこで手に入れたのでしょうか?

愛について言えば、一番身近だった両親や祖父母から授かった気がします。親父には殴られたこともありましたが、そこには愛があった。物事の基盤は家族なんです。これが人と人との結びつきの原点。私は家に帰れば3人の息子がいます。腹の中にあることを黙って隠しておけるような人間ではありませんから、息子たちにも言いたいことを言ってしまう。しかし、それでいいのだと思っています。愛する息子たちにさえ自分の意志を伝えられないようではいけないと考えています。

[11]業界のプロとしての知見はいかがでしょう? やはり必要だとお考えですか?

人の数だけキャリアの選択には違いが現れるはずですが、やはり興味関心=「やりたい」と、適性=「できる」が最低限ないと成功しません。いかに優秀な人物であっても、興味関心が希薄な仕事を選び、適性を無視して挑んでいては、上手くいくわけがありません。ただし、それはすなわち「興味関心や適性があれば、業界素人でも足跡を残せる」と言い換えることもできる。実際、そういう例は過去にいくらでもあります。

私自身がどうだったかといえば、ピープルズビジネスと言われる流通小売業に元々興味があり、デリバリーで差別化し得る業態に強い関心があり、古い業界で新しい切り口の事業を大きく伸ばしていくことに自分の強みや適性があると考えて、自分のキャリアを形成してきました。「業界のプロとしての知見があったからここまで来ることができた」のではない。「やりたい」と「できる」が常に揃っていたことが、私を前に進めてきたのだと思います。

[12]過去に体験した最大の試練やストレッチされたご経験について教えてください。

試練を乗り越えた結果、ストレッチを得るという経験ならばたくさんしてきました。けれども、ちょっと違った形でのストレッチもありました。私がハンバーガーショップの運営を通して外食産業に乗り出した時、当時のオーナーからは「お店で実行される仕事は一通りやらなきゃ駄目」と言われました。ですから本当に何もかもを経験しました。そこで判明したのが、トマトを真っ直ぐ切ることのできない自分(笑)。まあ、とにかくヘタクソでした。アルバイトの男の子たちが鼻歌交じりでできてしまう工程なのに、何度やってもうまくいかない。まあ、そんなこんなで苦手なことをとことんやっていた時代でした。

それがイヤで逃げ出したわけではありませんが、とにかくその後、私はカクヤスの人間になった。酒屋です。お客様の大半は飲食店です。過去の苦い経験がありますから、もう飲食のプロだ、というだけで素直に尊敬しましたよ(笑)。そして、ありがたいことに私のそういう尊敬の気持ちは、ちゃんとお客様に伝わっていき、信頼関係作りの強力な追い風になってくれました。

つまり、時には転職というものがリセットの効果を生み出し、過去の試練体験が次の職場でのストレッチにつながる場合もある、ということです。

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