現役戦略コンサルタントコラム戦略コンサルタントがクライアントに提供する価値とは?

はじめに

戦略コンサルタントがクライアントに提供する価値とは?

近年、生成AI(Generative Artificial Intelligence)の進展は目覚ましく、戦略コンサルティング業界においても大きな構造変化をもたらしています。これまで戦略コンサルタントは、膨大な情報を収集・整理し、論理的に分析することで、クライアントが直面する経営課題に対して最適な戦略を提言する存在でした。

しかし、今や生成AIは、過去の事例データをもとに仮説を提示し、ロジカルな構造化やドキュメント作成すらも自動で行うことが可能になっています。つまり、従来コンサルタントが担っていた「分析的知性」の一部は、AIに代替されつつあるのです。

その結果、クライアント自身がAIツールを用いて高精度な戦略仮説を立案できるようになり得、「コンサルタントに頼らずとも一定レベルの戦略立案ができる」という現象が生まれています。このような状況において、戦略コンサルタントがクライアントに提供できる独自の価値とは何か。単なる情報処理や分析の巧拙を超えた「人間ならではの付加価値」とは何か。

本稿では、生成AI時代におけるコンサルタントの本質的な役割を再定義し、その価値の根幹を探ります。

本論

1. 戦略コンサルタントが提供してきた価値の変遷

戦略コンサルタントが経営の最前線に登場したのは、20世紀中葉のアメリカにおける「経営の科学化」の潮流に遡ります。当時、企業経営は経験や勘に頼る部分が多く、定量的な分析やロジカルな意思決定の枠組みは十分に整っていませんでした。マッキンゼーやBCGなどの黎明期のコンサルティング・ファームは、「科学的経営手法」を武器に、分析を通じて経営を合理化することを使命としていました。すなわち、この時代の価値の中心は「分析と知の独占」にありました。

続く1980~2000年代、グローバル化とIT革命の波が押し寄せ、企業環境は一層複雑化しました。戦略コンサルタントの役割は「分析者」から「戦略設計者」へと拡張され、クライアントにとっての羅針盤として機能することが求められました。ポーターの競争戦略論やBCGマトリクスなど、いわゆる"戦略フレームワーク"が生まれたのもこの時期です。コンサルタントはデータを解釈し、意味づけることで、クライアントに「選択と集中」の論理を提供しました。

この段階での価値は、「高度な分析を通じて、意思決定を支援する知的専門性」でした。筆者がコンサルタントになったのはこの頃です。

そして2010年代に入ると、デジタル化が経営の中枢に入り込み、データ分析や予測モデリングは多くの企業内で内製化され始めます。その結果、コンサルタントは単なる「戦略の提案者」ではなく、「変革の実行支援者」としての役割を強化していきました。戦略の構想から実行・組織変革に至るまでを一気通貫で支援することで、クライアントの現場との距離を縮めたのです。この時期の価値の中核は、「組織変革と実行の並走支援」に移行しました。

2020年代に入り、生成AIが出現しました。出現当初はハルシネーションがひどく、できることも限られていたため、AIがコンサルタントの脅威になるのはもっと先ではないかという見通しでした。但し、2024年頃から状況が変化していきます。AIはデータの収集・整理・要約を瞬時に行い、さらに仮説生成や戦略文書のドラフトまで自動で作成できるようになりました。これにより、従来コンサルタントが優位を保っていた「情報処理」「ロジック構築」「ドキュメント化」といった領域の差別化が難しくなったのです。もはや知識や分析能力の差では優位に立てない状況です。ここに、戦略コンサルティングという職業の「存在意義の再定義」が迫られています。

すなわち、戦略コンサルタントの価値は、
● 第1世代:「知識と分析の提供」から、
● 第2世代:「戦略構築と意思決定支援」へ、
● 第3世代:「変革実行と伴走支援」へ、
そして現在、第4世代として、
● 新たな価値提供を求められる時代に直面しています。
この歴史的文脈を踏まえた上で、以下では生成AI時代において戦略コンサルタントが果たすべき新たな価値を論じていきます。

2. 戦略コンサルティングの本質的価値

戦略コンサルティングの価値は、単なる「知識の提供」ではなく、「知識を文脈に合わせて意味づけ、未来を形づくる思考プロセス」にあります。AIがどれほど多くのデータを分析し、最適化を行えたとしても、クライアントが置かれる状況、業界の政治的・文化的文脈、組織の歴史的経緯、経営者の価値観などを総合的に踏まえた上で「実現可能な未来像」を設計することは(少なくとも2025年下期現在においては)容易ではありません。

コンサルタントが果たす最大の役割は、「意味の翻訳者」であることです。経営者の思考を整理し、データの背後にある構造的課題を解釈し、ステークホルダー間の言語のズレを橋渡しする。このような「構造化された対話の促進能力」こそが、人間であるコンサルタントの固有の強みです。

AIは「答え」を出しますが、人間のコンサルタントは「問い」を創り出す存在です。AIが処理できるのは既知の問題、すなわち「正解のある領域」に限られます。これに対し、戦略コンサルタントが介入するのは多くの場合、正解のない曖昧な状況です。市場の変化が激しく、業界構造が揺らぐ中で、どの方向に進むべきかを定めるためには、「何を問うべきか」を見極める力が必要です。この「問いの設計能力」こそが、生成AI時代における人間に残された最大の武器なのです。

3. 生成AI時代におけるクライアントとの距離の変化

AIの普及により、クライアント自身のリテラシーが格段に高まりました。経営企画部門や事業開発部門の担当者は、ChatGPTやCopilotなどを活用して、短時間で業界分析や競合比較を実施できます。AIは、かつて数百万円を要したリサーチ作業を、ほぼ無料で、数分で完了させるのです。結果として、コンサルタントとクライアントの間に存在していた「情報格差」「分析力の差」は急速に縮小しました。

しかし、ここにこそ戦略コンサルタントの「進化の余地」があります。クライアントと同じ情報を持ちながらも、そこから「何を読み取り、どのように判断するか」の部分に、人間の経験と直感、倫理観が問われるのです。たとえば、AIが「収益最大化のための最適戦略」を提示したとしても、その戦略が社会的信頼を損なうものであれば、企業価値は長期的には下がります。コンサルタントは、単に合理的な答えを導くのではなく、「この判断は本当に組織の存在意義と整合しているのか」という倫理的・哲学的視点から助言を行う存在です。

つまり、AIが「頭脳」を提供するならば、コンサルタントは「良心」と「直感」を提供する。AIが論理を完璧に描けるようになった時代だからこそ、論理を超えた「意味」を語る力が問われます。

4. コンサルタントが果たす「対話」の価値

戦略コンサルティングのプロセスの中核には「対話」があります。クライアントとの対話を通じて、表面的な課題の背後にある本質的な問題を浮かび上がらせる。これはAIには難しい行為です。AIは質問には答えられますが、「相手の沈黙の意味」や「非言語的な抵抗」を読み取ることはできません。

優れたコンサルタントは、会話の間や空気の流れの中から、組織が抱える無意識的な葛藤を感じ取り、それを言語化する力を持っています。例えば、「なぜこの議論では誰も"リスク"という言葉を使わないのか」「なぜこのプロジェクトに熱量が生まれないのか」といった暗黙の構造を見抜くことです。これらはAIが解析できない「人間の文脈理解」の領域です。

対話とは、単に情報を交換する手段ではなく、共に思考を深めるプロセスです。コンサルタントはクライアントの「鏡」となり、彼ら自身が自らの思考を再構築できるよう促します。その結果、戦略立案は「外部専門家による助言」ではなく、「共創による学習プロセス」として再定義されるのです。

5.「未来を描く力」と「リスクをデザインする力」

AIは過去のデータから未来を予測することに長けていますが、「前例のない未来を構想すること」はできません。未来を描くとは、未知の要素を前提に新しい物語を紡ぐ行為です。戦略コンサルタントが提供する最大の価値の一つは、この「物語としての未来構築」です。

未来のシナリオを設計する際、コンサルタントは単に確率的予測をするのではなく、「ありうる未来」「望ましい未来」「避けるべき未来」という三層構造で考えます。クライアントが意思決定する上で重要なのは、どの未来を選び、どのリスクを受け入れるかという選択のデザインです。AIがリスクを数値化できても、その「リスクを取る勇気」を生み出すのは人間です。戦略コンサルタントは、その勇気を理性で支える存在でもあります。

終わりに

生成AIは、戦略コンサルティングの世界において、確かにゲームチェンジャーとなりつつあります。分析、文書作成、仮説生成といった多くの領域でAIは既に人間を凌駕しています。ここまで述べてきた新たな価値も、もしかしたら近い将来AIに代替される可能性も否定できません。けれども、戦略コンサルティングの本質は、単なる情報処理や合理的分析にあるのではなく、「人間が未来をどう生きたいか」という根源的な問いを扱う点にあります。

コンサルタントが提供すべき価値は、データの中に隠れた意味を読み取り、クライアントとともに未来を構想する力です。AIがいかに賢くなっても、「価値観」や「意味」や「物語」を創り出すことはできません。だからこそ、生成AI時代の戦略コンサルタントに求められるのは、知の量ではなく「洞察の質」、分析の正確さではなく「関係性の深さ」、論理の強さではなく「問いの深さ」なのではないでしょうか。コンサルタントしての希望も込めて、人間だからこそ提供できる価値について追及していきましょう。

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