はじめに
コンサルティング業界への転職を考える際、現在はまずエージェントに登録して転職活動をする流れが主流になっています。
転職エージェントでは、転職希望者は知っている有名な大手コンサルティングファームを希望として出し、同時にエージェントに進められるままにいくつかのファームに応募する流れが一般的となります。
結果、今回テーマの「大手ファームを目指すべきか？」という「べき論」の前に、基本は大手ファームを目指す流れになっているのが現在のコンサルティング業界における転職事情かと思います。
正論をかざすと、転職希望者はキャリアゴールや自身として大事にしたいことに基づきコンサルティングファームを選択していくことを勧められます。
しかし、各コンサルティングファームが採用市場でアピールしている内容はほぼ同じ（働き方改革、ダイバーシティ、等）であることから、どのファームが最適であるかの判断もつかず、転職希望者も先述の通りの転職事情で動かざるを得ない状況ではあります。
では、その流れが転職希望者にとってネガティブな状況になっているかというと、実はそうではないと私としては考えています。
総論として、現時点では小規模なファームよりも大手ファームの方が諸々を考えると"コスパの良い職場"だと言えるのが現状です。
"コスパの良い職場"とは
以前は無茶な働き方が一般的でした。
この無茶な働き方はクライアントからのコンサルティングへの期待に根差しています。
それは先に期限（経営会議、外部への中期経営計画の開示、等）が存在し、そのタイミングまでに必要十分な検討を間に合わせていくことが期待されるためです。結果として、検討ボリュームに対して期間や検討人員数が十分でない場合に無茶が発生してきた構図となります。
しかし、現在はコンサルティング需要に対して供給（コンサルティングサービスの提供）が追い付いてないことを背景に、「この期限内でこの予算だとこのぐらいの成果物」になるといった対話を通じて、以前と比較してプロジェクトはゆとりを持った設計になってきています。
特に大手ファームにおいては、そうでないファームと比較してクライアントのカバー範囲が広く、また一部人材の稼働が落ちたとしてもファームの経営不安に陥りにくい状況になっています。そのため、「この期限内でこの予算だとこのぐらいの成果物」になるといった対話においても「何が何でも受注したい！」というスタンスにはなりません。そのため、働き方と報酬のバランスは非常に魅力的な状態と言えるのではないでしょうか。
また、将来的には不透明な部分はありますが、現時点では大手ファームでの経歴はファーム卒業後のキャリア選択の際にネームバリューを持ちます。
なお、ファーム卒業後のキャリア選択の際に戦略ファームを志望する際は注意が必要です。
キャリアロンダリングとして比較的入社のハードルも低くなっている大手ファームに一旦所属し、狭き門と言われる戦略ファームを志望される方がいます。
長く戦略ファームでの採用に携わっている身としては、業界の実態も理解している中で実力に見合わない報酬を主張する恥ずかしい状態になっている方も散見されますので、その点は要注意です。
最後に
総論として現時点では大手ファームの方が諸々を考えると"コスパの良い職場"をお勧めはしますが、一方で気をつけないといけない点は"大手ファーム"という点です。
つまり、コンサルティング以外の業界で大企業へ入社するのと同じ構図と理解頂ければと思います。
どの部署で、どの上司と一緒に仕事をしたかによって、"コスパ"は何もかも変化します。
いわゆる、"上司ガチャ"と言われる事象です。
上司によっては非常に大変な経験をする場合もあります。その際、その経験が、自身の成長スピードや卒業後のキャリアチャンスにポジティブな影響を与えるかの見極めが重要です。
頑張る価値があるのは、上司が戦略ファームを含めて顔の効く人物である場合です。採用、特に戦略ファームでの採用では誰と仕事をしていたかを可能な限り確認し、リファレンスを重視します。その際、「あの人のお墨付きであれば間違いない」という方であるかの見極めが重要です。
因みに、私自身は大手ファームに所属はしていません。それは、若いうちは良いかもしれない大手ファームもマネージャーを超えだすとある悩みが出てくるからです。それは自由度の問題です。
本稿では割愛しますが、大手ファームでパートナーに近くなればなる程に発生する仕組みと政治の問題が存在します。
ただ、そういった全部を含めても総論としては現時点では大手ファームをお勧めしますが、まずは正論でキャリアゴールや自身として大事にしたいことに基づきコンサルティングファームを選択するプロセスを踏んだ方が良いかもしれません。
