プライベートエクイティ最前線ソーシングフェーズにおける具体的な仕事内容(意向表明書の提出に向けて)

今回は前回に続いて、ソーシングフェーズの具体的な仕事内容について紹介したいと思います。前回は、投資先の発掘活動について書きました。では次のフェーズに移るようなときはどのような動きをしているのでしょうか。具体的な仕事内容を想像しやすいように以下の前提としておきます。

● FAから事業承継案件(発行済株式全てが譲渡対象)の紹介を受ける
● 発行済株式全てを創業社長が保有(対象企業は非上場。創業社長が意思決定者)
● 後継者の適任者が社内に存在せず、事業会社ではなくバイアウトファンドを希望
● 創業社長は、株式譲渡後に退任をしたい意向
● FAは限定的な候補者しか声掛けしていない(FAはIM(*1))を作成していない)
● 対象会社の規模は、ファンドの投資に対象となる
● FAに対して、オーナーとの面談設定を依頼
● FAは、開示する情報をもとに意向表明書(*2)の提出を要求

(*1)Information Memorandumの略。IMには対象会社の投資ハイライト、事業モデル、財務数値(過去、将来)が掲載されている

(*2)買い手が検討している価格等の取引条件を売り手に伝えるための書面

最初に取り組むのは情報の整理です。このような案件の場合、対象会社が非上場のため、対象会社に関する情報はあまり公開されていません。そのため、FAを経由して取得する情報をもとに検討することになります。

ここで重要なのは、どのような情報があれば投資実行の意思決定できるのか整理することです。もちろん、このフェーズで取得できる情報は限定的です。そのため、若手は、事業の本質を理解するために必要な情報を特定し、その情報が開示されるようにFAを通じて、資料依頼や質問を行うことになります(これは、ファンドマネージャーの力量が試されるところかと思います。案件紹介を受けた時点で投資シナリオの仮説が立てられるか、そしてそれを検証する方法を考えられるかがポイントとなります)。

必要な情報を収集、整えながら、対象会社の魅力を特定し、価値算定を行っていきます。基本的には、価値算定は、LBOモデルを用いて当方が期待するリターンを実現できそうか検討します。売り手側にFAが就いている場合、往々にしてFAが事前に価値算定を行っているため、売り手に希望価格目線があり、そこにファンドの目線が合うかどうかを検証することになります。

LBOモデルは、受領している情報量によっても異なりますが、このフェーズでは0からPL、BS、CFをつなげなければならず、作成に時間がかかる傾向にあります。一番時間がかかるのは、PLの分解だと思います。事業によって売上や費用も異なりますが、キードライバーを理解し、売上や費用を連動させることが重要となります。

また、LBOモデル作成には、買収資金として、銀行からどの程度借入を調達できるのかを把握する必要があります。CA締結の上、銀行のLBO部隊に案件概要を伝え、借入可能な金額水準を把握します。このとき、銀行はDDレポートを受領前でかつ審査との協議前のため、具体的な融資金額までは言及することはありませんが、過去の類似の業種やビジネスモデルの会社への融資経験からEBITDAの何倍という形で融資目線を伝えてくれます。

LBOモデルで算定した価格の妥当性を検討するために、その他の価値算定手法も用います。その他の評価手法を例示すると、類似企業比較法、類似取引比較法などが挙げられます。

このプロセスは、売り手にFAを通じて質問や資料依頼を行います。質問や資料依頼が多くなりすぎると、売り手側も疲れてしまいますので、ファンドマネージャーは常に「本質的なことを尋ねている/依頼しているのだろうか」と自問自答しながら行っています。

対象会社の魅力や当方が提示する価格が定まったら、意向表明書を作成します。意向表明書は売り手に対するラブレターとなるため、売り手が自分たちのファンドを選ぶ理由が明確になるようにします。意向表明書の内容としては、以下のようなことを書いています。

[1]ファンドの紹介
[2]対象会社の魅力(ファンドとして何を評価しているのか)
[3]評価額とその前提
[4]投資後のシナリオ仮説
[5]投資後のシナリオの実現方法

実際に意向表明書を作成していて、検討に時間を要するのは、[4]と[5]です。評価額以外に売り手にアピールするのは、この箇所になります。ですので、ファンドマネージャーはより売り手が売却後の対象会社がどのようになっていくのか想像できるように具体的に書くようにしています。

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